死体

僕は僕にしか見えない外星人の死体と暮らしている。何年も。
僕が死んだらおまえと同じところにゆくのだろうか。
メフィラスの死体は僕の部屋のカーペットに横たわっている。鞣されて染められた動物の皮のように黒い、鴉の濡れたように黒い、しかしこの地球上のなにものにも似ていないすがた。彼人に向かって、僕は何度も問いかけている。
僕の訊くことには何だって答えてくれたメフィラスはもう、応答することはない。
それとも結構はぐらかされていたのだったか。
そんなことも僕はだんだん思い出せなくなっていく。地球人の姿を取って饒舌に話したメフィラスとの会話の記憶はあやふやになり、薄らいでいく。
宇宙単位でみればそれほど長命ではない生命体のくせに、たった十年や二十年でこうやって忘れてしまう。僕はただの地球の人間なのだ。
なあメフィラス、おまえはどうやって僕を見つけたのだろう。
忘れたくなくて、僕はメフィラスの死体と暮らし続けている。