掏摸と探偵助手・2

一週間の旅行に探偵助手を誘った。港湾都市、内陸の城下街、寺社の多い観光地。列車に乗ったりレンタカーを借りたり、毎日異なる宿に泊まった。

助手は一週間も街を出たことなんてないだろうと踏んでいたのだが、意外と旅慣れている。探偵と連れ立って、一週間どころか事件の手がかりを得るための長旅をしたことがあるらしい(旅情サスペンスか?)。旅行計画を立てて、許可を取るために探偵に旅のしおりまで作って出した俺はとんだ間抜けじゃないか。

とはいえ、旅がつまならかったと言ったら嘘になる。我ながらなかなかの旅程が組めたと自負しているし、くるくる変わる助手の顔は楽しかった。

最後の夜は張り込んで、温泉街の旅館の離れを取ったのだが、それは失敗だったかもしれない。豪勢な懐石料理が下げられて、ビールを互いにグラスに注ぎながら、会話がまばらになる。苦痛というほどの沈黙じゃないが、少し静かすぎる。

六日目の夜は飲み屋の近いどや街にでもすればよかったと反省していると、探偵助手はぽつりと口を開いた。当ててあげるよ。

「この旅は、きみが今まで渡り歩いてきたところをめぐっているんだろう」

助手はじっと俺を見つめた。宿の用意した浴衣に羽織、座布団も敷かずに畳に座って、足を投げだしている。探偵の前ではもっと行儀がよくって、座布団を使うのだろうか、と俺は想像する。助手の耳朶はいつもよりわずかに赤いが、ビール三杯くらいではこいつは酔っ払わない。

俺は答えずに先を促す。

「この街はきみが生まれたところ?」

俺は肩をすくめた。

「さあな。おまえとしっぽりやりたかっただけかも」

助手はふふ、と、鼻を鳴らしたのだか笑ったのだか判然しない音を発した。

遠くでわっと歓声が聞こえる。本館の団体客だろう。

いくら抜き取れたかな。逸れた俺の思考を引き寄せるみたいに、助手は右足を足首からくるりと回してみせた。

「冷えてきた」

へいへい、と俺は膝歩きに近づいて、胡座をかく。ひと摑みで指が余るほどの助手の足首を、俺の腿の上に載せてやった。たしかに助手の足はひんやりしていた。

「こんなにつめたい足じゃ、帰れないだろ」

助手は仰向けに躯を倒した。

動揺している俺をよそに伸びをして、

「全然!」

つれないことを言いやがる。