掏摸と探偵助手

掏摸と探偵助手

「先生は僕が頼りないと思っているのだろうか…」
河原の芝生に三角座りをして、膝に額をくっつけて、探偵助手は呟いた。僕はとっくにお酒が飲める年齢だけれど、とさっき文句を言ったばかりのくせに、ガキみたいに心細そうな声だった。
この街に来て最初の獲物、駅で見かけた育ちの良さそうな好青年の財布を擦ろうとしたの運の尽き。お坊ちゃんは俺の腕を捻り上げて取り返し、鉄道警察に突き出した。聴取の際にさりげなく聞き出したところ、この街では知られた探偵の助手らしかった。そこからなぜか腐れ縁が続き、こうして、どうして独立をさせてもらえないのだろうと弱音まで聞く仲になってしまった。
そりゃあお前がかわいくって心配だからだ!
腹が立つやらばかばかしいやら。俺は、こんな馬鹿にとっ捕まってしまったのか! 助手が助手なら師匠も師匠だ、と、思った。俺には代弁してやる義理もない。大切なことが伝わっていないのなら、言わないほうが悪いのだ。
こっちに来いよ探偵助手、と俺は手招く。
「キスがしたいな。キスしてやるよ」